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100万人の金色のコルダベースに、吉羅暁彦理事長×日野香穂子の小説・イラスト・漫画を書いてます。 http://kirariji.side-story.net/ 主に吉羅理事長に関することばかり書いてます。 絵は全て自作です♪吉羅暁彦様が麗しすぎてたまりませぬ(*´д`*) <!--shinobi1--><script type="text/javascript" src="//xa.shinobi.jp/ufo/190752100"></script><noscript><a href="//xa.shinobi.jp/bin/gg?190752100" target="_blank"><img src="//xa.shinobi.jp/bin/ll?190752100" border="0"></a><br><span style="font-size:9px"><img style="margin:0;vertical-align:text-bottom;" src="//img.shinobi.jp/tadaima/fj.gif" width="19" height="11"> </span></noscript><!--shinobi2-->
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――皮膚で明確に隔てられた個体に対しての限界――
(ヴァーチャル・レッド 2巻作者後書きより)

全三巻まで通読し、その後何度も何度も読み返しています。

男と女が寄り添っていても、抱き合っていても、互いの心臓の鼓動まで感じていても。
肉体の一部が繋がり、不随意な内臓の蠢動さえ感じ取れても。
それでも、その瞬間この世で一番近くにいる相手のはずなのに、その人の考えていることがわからない。
抱き合うほど感じる孤独、理解への限界、「この人と私は別な生き物」という認識だけが広がる。
皮膚一枚という区切りは時に残酷なほど、寂寥感を駆り立てるだけにしかならない。


相手は何を考えているんでしょうね。

こいつ太ったな。
俺は続かなくなった、体力がなくなったな。
腹減った。喉渇いた。
今日は何時ごろには帰るか。
ああ、明日の仕事の段取り付けがめんどくせえな。
今何時なんだろう。
早く外の雨が止むといいんだけど。


想像するほどわからなくなる。

――この女、何を考えてるんだろう――

と相手が感じていることは、想像に難くない。

体熱をともにしていても、眠っても起きても、好きでも嫌いでも、やっぱり自分には相手のことがわからない。


不意に女に置いて行かれてしまった男が綴る、鎮魂と悔恨の物語が、夢か現かわからないあやふやな境界線上に現れては消える。
本当の記憶なのか、それとも後付にされて増幅・捏造されたものなのか、全てが曖昧になる。


好きな相手に突然去られた記憶のある人にとっては、心を抉られるような物語が、「ヴァーチャル・レッド」です。
傷ついても血を流しても、それでも想わずにはいられない。
妻の律夏が突然殺され、遺された「藤井」の呟きがある意味とてもリアルで、苦しくなるほどに彼の痛みが伝わってきます。

「どこにもない物語だけれどどこかにありそうな」とは作者シギサワカヤさんの言ですが、閉鎖的なムラ社会での権勢を振るう旧家って、いかにもありそうじゃないですか。
それから、一人浮いちゃってるがために不名誉な噂がつきまとい、女子に嫌われる女子学生というのも。

律夏の死後、次々と立ち現れる彼女についての情報。
錯綜して惑乱して、感情がかき乱されてゆく「藤井」が哀れで、そして健気に映ります。
彼女は自分にとってはなんだったのか。
彼女にとっての自分とはなんだったのか。

繰り返し自問自答し、彼女の最期の日二日前に会ったという元警官の言葉。
「藤井さん、あなたに奥様のことについて話したいことがある」
彼女の命日にはそこを通るようにしていたという元警官。
いつも交番の前を通りすがるだけだった律夏が、100円玉を届けにくる。
「もしも誰にも話せないようなことがあったら、来てください」との警官の言葉に律夏が返す。「大丈夫です。今の私には、ちゃんと話す人ができたんです」


律夏の言葉通り、彼女は殺害前日に藤井と話そうとする。
「ああ。また今度な」
仕事の多忙さで先送りを続けた藤井の当日の言葉。「今日こそは早く帰って、あいつと話したい。もうそろそろ、仕事と私とどっちが大事なのかと言われる気がする」――

間に合わなかった藤井の不甲斐なさを責め続け、律夏の無軌道を責める「由野」
くらやみにひとりで眠るのが怖いと言う律夏、くらやみは私の中にあると怯える律夏。
堕胎の繰り返しの挙句、藤井との子供を流産してしまう律夏
「あなたに嫌われたくない 卑怯な私」
三巻の最後の最後、ここにきて、やっと初めて彼女の側の心情が綴られる。


「あなただけ」と言いながら、故郷の幼馴染と情交を続ける律夏。
「セックスしたことがない」と言いつつ、手馴れた動作で藤井を受け入れる律夏。
彼女の呟きや囁きが嘘だらけで彩られているのは藤井にもわかっていて、それなのに惹かれていく。
繰り返し繰り返し体を重ね続ける二人で、エロティックなはずなのに寂しさを感じるのは、律夏のどこか諦めたような悲しげな眼差しのせいでしょうか。
「わかりあいたいのにわかりあえない二人」?
過去を隠してでも藤井と暮らしたかった律夏の真情は、一体どこにあったのか。

いつでも「女は」「男は」と、自分の認識を一くくりにする藤井に対して律夏の独白。

「こんな感情はあるはずじゃなかった。『女』じゃなくて『私』が、あなたの身も心も求めてやまないなんて――」


読後感は重いけれど、それでも不快感ではなくて、自分の中の寂寥感に迫る物語でした。
三巻まで通読して初めてわかる、律夏の謎かけの物語。
自分が男の藤井に感情移入して、まるで律夏の軌跡を一緒に探していくような気分でした。
男性が読めばまた違った感想になるのでしょうけど、それでも、仕事に忙殺される男性の感情の動きとか、うまいなあと思いました。

シギサワカヤ作品は全部集めたけど、これが一番心を掴まれました。
興味の湧いた方がいらしたら、是非ご一読を。
多分かなり読み手を選ぶ作品だとは思いますが。
いつものハッピーエンドではなくて、絶望的な状況の中でも日常に立ち返り、一条の希望と再生を目指す。
「それでも生きていかねばならないのだから」
藤井の呟きが心に残る物語です。

描かれているテーマのひとつは「鎮魂と再生」


曽祢まさこ「魔女に白い花束を」・粕谷紀子「天使のため息」・樹なつみ「花咲ける青少年(ユージィン)」と、共通する符号が感じられます。

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yukapi
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女性
職業:
イラストレーターだったりマンガ描いたり
趣味:
読書・文章を書くこと たまに絵を描く ディスカバリーチャンネル・ヒストリー・ナショジオ・アニプラ視聴
自己紹介:









100万人の金色のコルダの中で、吉羅暁彦理事長のエピソードを書いています。モバゲーやっと個人認証して交換等OKになりました。

好きな漫画家と漫画:三原順・シギサワカヤ・樹なつみ・山根和俊・山口貴由・絹田村子・長江朋美・大和和紀・里中満智子・槇村さとる・高橋慶太郎・広江礼威・藤原芳秀
ゴルゴ13・DD北斗の拳・北斗の拳イチゴ味・仏像のまち 




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